オウンドメディアをやってみたい!やってみよう!という際、どのようにすればよいでしょうか。社内で構築するケースをふまえて相場や実際のところをご紹介していきます。なお、本記事の見解に関しては、筆者の出版社勤務・個人事業主を通じた18年のビジネスメディアキャリア、メディア「事業革新」立ち上げを含めた3つのメディア運営を通じた経験と、調査・取材、参考文献(記事の文末を参照)に基づき執筆したものです。
メディア事業革新 編集長/合同会社事業革新 制作統括役員 小林麻理
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【1】社内主体で構築(内製)する

オウンドメディア構築をまずは社内主体でできるところまでやってみたい、という人や企業も多いのではないでしょうか。そのため「社内主体」を最初に扱い、オウンドメディア構築にあたって必要な作業をあわせて紹介していきます。
「社内主体」とはすべてを内製することに限らず、一部だけ外注するということも含みます。そこで、どこまで内製し、どの部分を外注するのかの検討するために、工程や作業を次の7つに分けて説明します。
(1)Webサイト
(2)コンセプト設計・全体企画
(3)(個別)コンテンツ企画・制作
(4)拡散(広告外)
(5)拡散(ネット広告)
(6)Webマーケティング
(7)サイト「運用」
(1)Webサイト
Webサイトは主に3つの選択肢があります。
①WordPressなどの無料(オープンソース)のCMSで内製する
Webサイトの社内制作のハードルが下がったのは、サブスクリプションで利用できるクラウドサーバーサービスと、そのサーバーに簡単にインストールできるWordPressなどの無料(オープンソース)のCMS(コンテンツマネジメントシステム)の登場によるものです。
これらにより、メディア風のWebサイトもが安価で自社で構築できるようになりました。数万円程度の有料のテンプレートを組み合わせることで、よりサイトのクオリティを上げることもできます。
W3Tchesの調査結果によると、全世界のWebサイトでCMSが使われていない割合は34%しかなく、CMSを利用しているケースが6割を超えています。CMSの中でのシェアはWordPressが1位で65.1%です。また日本におけるCMSのWordPressのシェアは83.8%と突出しています(下図)。
そのため、現在は、無料のCMSといえばWordPressというところです。ただし、abemaオウンドなど、新しいサービスも登場しています。
また、下記に挙げたような国内の主要なクラウドサーバーは、データ利用量ごとに1000円以下から利用でき、WordPressのインストールを標準サポートしています(下記記載は、2021年12月時点のWordPressインストールサポートプランの最低価格です)。
◆さくらのレンタルサーバ(さくらインターネット):月額524円~
◆LOLIPOP!レンタルサーバー(GMOぺポパ):月額220円~
◆XServerレンタルサーバー(エックスサーバー):月額990円~
もちろん(昨今は少ないと思いますが)自社でサーバーを設置している場合はそこにインストールしてもかまいません。
WordPressとそのインストールに関する本は大量に出ています。自分のレベル感にあわせて、読みやすい・わかりやすいものを選びましょう。このなかの1冊としては、筆者が最初に購入した「できるシリーズ」を紹介しておきます。
◆できるWordPress WordPress Ver. 5.x対応 本格ホームページが簡単に作れる本
②有料のCMSを利用する
自社でWebサイトを構築する…ということにハードルを感じる場合は、有料のCMSを利用することもできます。昨今は、クラウド月額課金で利用できるサービスがほとんどです。
各CMS会社が得意とする用途・業種と金額で検討し利用すると良いでしょう。
◆はてなブログメディア:サイトでは価格非公開
◆ferret One:月額10万円/初期費用10万円(スタンダードプラン)
◆ClipKit:月額5万円/初期費用3万円(機能充実プラン/プロフェッショナルプランは価格非公開)
③Web制作を会社・個人に依頼する
Web制作を行う会社は企業情報を掲載するサイト(Baseconnect)に登録・公開されているだけでも1万7000社以上あり、フリーランサーも含めると発注先候補は相当数あります。そのため、特に既知の制作会社がないというケースでは、まとめサイトや発注ポータルを利用するのも選択肢となります。
◆Web幹事:Web制作会社の比較まとめ・依頼サイト/登録数・約5,000社
◆ウェブタメ!:同・登録数・約330社
◆ランサーズ:フリーランス発注サイト
◆ココナラビジネス:同・ビジネス用途特化型ココナラ(フリーランス発注サイト)
価格は、会社か個人かはもちろん、構築ベースとして前述のCMSを利用しているかどうかで大きく差が出ます(もちろん利用している場合は完全オリジナル制作よりも割安になります)。そのうえで、下記の要件を複数、満たしているほど価値が高い(価格も高くなる傾向)と言えます。
◆ユーザー目線(UI)を考慮した全体設計ができる
◆インパクト・オリジナリティ面などデザインに強みがある
◆作業が早い(短納期に対応ができる)
◆SEO(内部)施策に詳しいなど、Web集客に強みがある
◆コンテンツ(企画含む)の提案・発注で強みがある
◆クライアントの要求をくみ取り、カタチにできる(提案力がある)
◆やりとりしやすい・修正が少ない
◆(特に有名)企業に対する実績が豊富
Web幹事には、オウンドメディアの構築費用についても解説記事があります。その内容によると、既存のCMSをベースとしたWeb制作(素材は依頼側がすべて用意)の場合、20万~100万程度で制作が可能とあります。
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(2)コンセプト設計・全体企画
①内製する
コンセプトの設計から、コンテンツの制作まで、広報など中心に内製するというケースもあります。この「コンセプト設計・全体企画」を誤ると、その後のコンテンツ企画・制作の作業の方向性を誤ってしまうため、「オウンドメディア」のコンセプトの立て方に関し、最低限の知識は知っておくことは必須です。
ここで説明すると長くなりすぎますので、知識を得るうえでのおススメ書籍のみをご紹介します。
①ブランドについて理解する
『小さな会社を強くするブランドづくりの教科書』
②Webブランディングについて理解する
『経営者のためのウェブブランディングの教科書』
③コンテンツマーケティングとオウンドメディアについて理解する
『Webコンテンツマーケティング~サイトを成功に導く現場の教科書』
『いちばんやさしいデジタルマーケティングの教本』
+特にBtoBの場合におススメ
『BtoBマーケティングの戦略と実践』
+特に中小(製造業)の場合のおススメ
『自社だけの市場が必ず見つかる中小製造業のための儲かるWebブランディングの教科書』
また、広報だけでなく、経営者、関連する事業メンバーも巻き込んでしっかりと議論することが大事です。コンセプトは決まっているけど「タイトルで悩む…」という場合も往々にしてあると思います。タイトルに関してはここでは長くなりすぎますので割愛しますが、コンセプト同様、たいへん重要な作業です。
そのため、多数決を取らない(決定権限者を分散させない)、意見を調整しない(折衷案は中途半端で凡庸なものになりがちだからです)ことを前提に、なるべく多くの人の意見をきくとよいでしょう。
②外注する・コンサルタント会社に入ってもらう
コンセプト設計や全体企画部分を外注する際には「専門家(コンサルタント)」に一時的にはいってもらう(その分の人件費・工数ベースで価格を見積もる)という感覚のほうが相場観がつかみやすいと思います。
1本〇〇円とならない背景には、コンセプト設計は外注するといっても、社内の人の協力がカギであり、顧客によってかかる時間が違いすぎることがあります。
また、膨大かつ高度な検討作業があっても、アプトプットとしては、~10枚程度の企画書に収まるので、1本の納品物として価値をはかられると往々にして割の合わない作業になるからです。
実際、ビザスクなどスポットコンサルティング特化型のマッチングサービスでは1時間平均が8~9万円(ライトプランで1時間平均が2万~3万円)と、時間単価が示されています。
ビザスクで平均を提示しているのは「時間単価」です。ランサーズでも、後述するライターは「時間単価」を提示している人が多くみうけられました。
「時間」ベースとは「労働時間(工数)」ベースとセットです。ですから、(たとえば同じ品質のものをあげることを前提として)8時間(1日)で10枚のアプトプットを完成できる人より、10時間(1日+残業)かかって1枚のアプトプットしかできない人の報酬のほうが多いとなりかねない考え方です。そうした「労働時間(工数)」ベースの考え方は、(請負契約が原則の)外注には本来的には合わないと言えます(アウトプットがベースとなるはずです。)
しかし、日本の市場では、「労働時間」のほかに「モノとして見えない部分」の「付加価値」を評価してお金を払うということが一般化していません。
そのため、「コンサルティング」という、高度な専門知識を背景に提供するサービスがいくら「1本〇百万円・〇千万」の価値があるといっても、受け入れがたいことになります。
一方のコンサルタント側ではその高度な専門知識を身につけるために、人生を含めて多大な投資をしたうえで、大変な労力をかけてアウトプットをするわけですから、1本数万・数十万では割に合わないことになります。
そこで、「モノ」として見える部分が少ないサービスの価値は、これくらい「労働時間(工数)」がかかるのだ、と「労力部分」を明示したうえで、「時間単価」をかけて(付加価値部分の明示)で相場を形成することになると推測されます。「あなたの会社でこれくらいの知識がある人を雇うとなると時給〇〇円ですよ」という比較の仕方もできるため、発注側の納得感もより得やすいのかもしれません。
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(3)個別のコンテンツ企画・制作
個別のコンテンツに関しても、企画と制作があります。コンテンツをどのように、誰が企画・制作していくかは検討のうえで大切なポイントです。
①内製する
まずは内製してみる場合、コンテンツ制作が好き・得意という人材がいればうってつけです。ただし大前提として、個別のコンテンツ企画・制作関しては、相当の負荷が継続的にかかるため、「業務」としてしっかりと評価する必要があります。
コンテンツ制作を、広報以外の社員が「持ち回り」で担当というケースも見聞きしますが、その場合も同様です。「人件費」が一定水準を超えたら外注を検討します。
②個人(専門家/ライター・クリエイター)に発注
コンテンツ制作を外注するという際に、まず考えられるのが個人に直接発注するというものです。出版社や広告代理店は、基本的に専門家やツテのあるライターに発注して制作を行っています。
そうしたツテがない企業は、前述のランサーズなどのフリーランス発注サービスを利用してライターにアクセスするのも選択肢です。
ただし注意したいのは、コンテンツで満たしたい要件(伝えたいもの)に基づき的確に発注するには技術が必要で、とくに品質コントロールはプロでさえ難しいということです。
もっとも悩ましいのは、著作権侵害(コピペ)問題と信頼性の担保です。こうした問題が発生した際は、サイト全体の閉鎖や企業の信頼失墜にもつながるため(コラム参照)、発注先は慎重に選ぶべきです。
信頼性という面では、専門家や有識者に関わってもらうのが一番安心です。ただし、(時間がかかる)執筆作業では、(少なくとも~数万程度では)専門家にとって絶対に割に合わない作業である、ということを踏まえた依頼(例)自著の宣伝などをセットにするなど)が必要です。その点、社内の有識者の(人件費は別として)「発注費用」はかかりません。
ですからおススメは、ライターに(できれば社内の)専門家・有識者を取材してもらい、まとまった本数をあげてもらうという方法です。そういう意味で、特にオウンドメディアにおいては協力してくれる社内の専門家・有識者の存在が、コンテンツの質のカギを握るといっても過言ではありません。
なお、自分の名前で仕事をしていて実績のある(企業が安心して発注できるレベルの)ライターは、取材込みで1回で1本(3000~5000字程度)の場合は5万~10万程度が相場と考えていただきたいと思います(ランサーズを見ると「時間単価」で提示している方も多いようです)。
また前述のおススメのケースのように1~数回の取材(1つのテーマ)で複数の本数をあげてもらうほうが、割安で受けてもらえることが多いでしょう(取材とそれに関わるテーマの下調べに時間がかかるからです)。
ライターもまさに玉石混交ですが、次の要件を複数、満たしているほど価値が高い(価格も高い傾向)ということになります。
◆取材(インタビュー)ができる
◆専門性のあるテーマが理解できる・希少性が高い得意がある
◆原稿の品質が良い※
◆作業が早い(短納期に対応ができる)
◆著作権の基礎を押さえている(引用ルールなど)
◆(コンテンツ)SEOの基礎を押さえている
◆発注者の発注意図をくみ取れる
◆やりとりしやすい・修正が少ない
◆実績がある
※原稿の「品質の良さ」には様々な観点がありますが「情報価値の高い」要素を数多く盛り込んでいる、というのは1つの指標になります(別記事参照)。
2016年、DeNAが運営する医療健康情報サイト「ウェルク(WELQ)」が配信する情報の信頼性が著しく欠けることや著作権侵害か指摘され、閉鎖するに至りました。
その後、投稿記事が主体で編集部の品質チェック機能が働かないまとめサイトは廃止が相次ぎ、DeNAは運営する10件のサイトのすべてを停止、ギャザリー(リクルート運営)、スポットライト(サイバーエージェント運営)も廃止となりました(2017年5月30日 日経新聞報道より)。
詳しい経緯や分析などは東洋経済ONLINEの記事などをご参照ください。ちなみに、本記事では関連事業に関し「アクセスを集め、まったく品質管理されていない低廉な記事を大量に投入することで広告価値を高めてマネタイズする仕掛け」とし、(そうした低廉な記事に騙された)「グーグルにも問題がある」としています。この事件でWeb記事品質に対する意識が一気に高まったと言え、グーグルのアルゴリズムも良品質の記事を評価するための改良が重ねられています。
出版業界でも、著作権侵害の発覚による出版(事前・事後)差し止めなどの事例は見聞きします。編集者がそれを見抜くには、関連文献にかなり精通していないと難しいため、もっとも悩ましい問題と言えます。結局、書いた人を「信頼」するしかありませんから、「信頼」のおける人に発注したいということになります。
③制作会社/編集者に発注
テーマに沿って記事を書くことを専業とするライターは、本来は「テーマ設定(個別企画)」自体に関与しません。ですから発注の仕様が細かく決まっていないと書けない、ということにもなってしまいます。
そこで、クライアントからの要件を聞き、それをもとに個人へ発注(または社内で制作)し、コンテンツのチェック・品質保証機能をもつのが制作会社や編集者です。
良い制作会社/編集者は、クライアントの要件を「深く」くみ取って、それをカタチにしてくれたり、本来の目的に対する提案を行ってくれるものです。逆に避けたいのが、クライアントが言ったことをそのまま外部に「丸投げ」する制作会社/編集者です。
この点の良しあしを見極めるのは難しいため、紹介(ツテ)に頼るか、実際に小さい仕事をいくつか発注しながら、信頼のできる制作会社・編集者を見つけるしかありません。
なお、全体企画と同じ理由で(価値が理解されづらい)「企画・発注・品質管理」のみを受注するケースは少ないです。そしてコンサルタントではないため「時間単価」ではかるのも難しいとなります。
結果、制作(編集込み)を発注する際は、ライティング0費用(1本5~10万程度)と同等の金額が編集費用として上乗せされ、1本につき10~20万程度が相場となります。
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(4)拡散(広告外)
オウンドメディアの立ち上げ後もコンテンツ制作以外で行いたいのが「拡散」という作業です。というのも何億もの記事が日々UPされているWebの世界では、「だまっていても見つけてもらえる確率」がどんどん下がっているからです。
そこで、意識的に情報を拡散する・発見してもらうための作業が必要ということです。この拡散は、お金を出して行う「ネット広告」とそれ以外の「広告外」があります。まずは、広告外のものから押さえておきましょう。
①公式SNSを開設して拡散する
「Facebook」「Instagram」「Twitter」「YouTube」など、自社の公式アカウントを設置し、記事をシェアするなどして、紹介・拡散する方法です。
この際、「つぶやき」やシェアする際の「紹介文」もコンテンツであるという点が注意です(炎上を招かないためにもガイドラインが必要です)。また、社内で行う場合、コンテンツ制作と同様、業務として評価するというのはポイントです。
②社内で周知し個人でも拡散してもらう
現在、無視できないのは個人の発信力です。記事を公開したら、社内でも周知し、自社のオウンドメディア記事は積極的にシェア・拡散してもらえるよう呼びかけるのも大切です。
③「Yahoo!ニュース」など他のメディアと提携する
「記事」コンテンツの魅力はその汎用性と拡散力です。提携ができそうなメディアがあれば、積極的に提携して露出を増やしましょう(コンテンツが欲しいのはどこも一緒です)。
担当者と話がつけば、一般企業が運営しているオウンドメディアや運営規模が小さなWeb媒体だけでなく、(一定の条件と契約が必要ですが)「Yahoo!ニュース」など大手のサイトでも提携が可能です。
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(5)拡散(ネット広告)
ネット広告は、従来のマスメディアより安価な価格でしかも見込み顧客を「ターゲティング」できるという点に特徴があり、様々なモノがあります。
①前提となるさまざまなネット広告の種類
ネット広告の種類は多様ですので、ここで、簡単に類型をみておきましょう。
◆【Webメディア】
Webメディアの考え方は、雑誌の記事広告やスペース広告と基本は、同様の考え方です(掲載を予約した場所に対し掲載料を払い、制作込みで依頼する場合もある)最近では、ビジネス有力媒体も、紙媒体とWebメディアでセットのプランを出しています。そのため、取り扱いは「広告代理店」や「メディア広告営業部」となるケースが多いでしょう。
◆【SNS】
Facebook、Twitter、Instagram、LINEなどへ、ふだん閲覧しているコンテンツの中に記事の「露出」を増やせるタイプの広告を提供しています。個別の詳細はここでは割愛しますが、ユーザーの特性にもとづいて、広告主が広告を表示させるターゲットを絞ることができ、安価な金額から出稿することができるのが特徴です。
◆【YouTube】
YouTubeにもSNSと同様、広告(動画)がうてます。ただし、その場合、「記事シェア」ではなく、概要欄などから記事に誘導する必要があります。
◆【(ディスプレイ型)ターゲティング広告】
「Google AdSense」に代表される、ディスプレイ型のターゲティング広告は提携(認証)したメディアに、顧客のブラウザ行動から類推してもっとも興味があると思われる広告を表示します。なお、広告主は、表示されるメディアを指定することはできません。
◆【リスティング(検索上位に表示させる)広告】
「Google Adwords」に代表される、検索「キーワード」が入力された際に、お金を出して上位に表示してもらう広告です(テキスト形式)。支払いは、1クリック単価(CPC:Cost per Click)×クリック数です。特徴的なのは「キーワード」が入札方式で、人気のあるほど、CPCが高くなるというものです。
②社内で広告を運用する
ネット広告は(広告代理店を通じなくても)直接企業が出稿・運用できるのが利点となります。少額で試すことで社内のノウハウにもなります。
13人の著者が名を連ね11の「短期高速PDCA型広告」事例を紹介している書籍『運用型広告 プロの思考回路』では、「そもそも広告とは運用するものである」「ひたすらPDCAを回せ」といった運用型広告の心構えが書かれています。
③外注する
上記の心構えはもっともであるゆえに、社内で運用する現場の苦労も大きくなります。また、慣れないネット広告出稿に最初は戸惑うことも多いでしょう。
そこで、特にやりたいことと実施したい施策がある程度決まっている場合は、その部分だけをネット広告代理店や個人に外注するという選択肢もあります。
施策ごとにノウハウが変わるため専門を特化しているケースも多いようです。それに対し、総合的にアドバイスが欲しい場合は「コンサルタント」価格で外注することになります。
参考書籍(記事下部参照)などの情報を総合的に加味すると、代行のみの広告手数料は10~20%程度が相場で、下記の要件を満たしている(コンサルティング要素が加わる)ほど価値が高い(価格が高くなる傾向がある)と言えるようです。
◆出稿代行できる取り扱い広告(サービス)の数が多い
◆報告がこまめである
◆出稿代行だけでなく広告内容(クリエイティブ)も扱える
◆上記をあわせてコンサルティング(企画・提案)もできる
◆テストマーケティングとそれを踏まえた提案ができる
◆複数の広告先を組み合わせた提案ができる
◆最新の情報にキャッチアップしている
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(6)その他・Webマーケティング施策
Webはアナログ時代に比べて、大量の顧客「データ」を取得することができます。それゆえにそのデータを利用した様々なマーケティング施策が実施されています。ここでもネット広告同様、前提となる代表的なWebマーケティングの種類について見ておきましょう。
①前提となる様々なWebマーケティングの種類
◆【SNS】によるマーケティング
前述のようにSNSでは、表示する(露出を増やす)相手をターゲティングして、広告を打つことができます。そのため、どのような内容(クリエイティブ)が、どのような相手に刺さりやすいか、といった点を調査することができます。オウンドメディアが対象としたかった相手の共感を得ているかなどの確認に利用しやすいツールと言えます。
◆【アクセス調査・解析】によるマーケティング
もっとも基本的なのが「Google Analytics」などの解析ツールによって、どの記事にどのくらいの人が訪れたか、どれくらい見ていたかといったアクセス情報を調べる方法です。それにより、記事が狙いどおりの効果をあげているかを測定する方法です。
◆【SEO施策】によるマーケティング
SEO施策とはGoogleを代表とする検索エンジンに(前述の広告費を払わずに)上位表示してもらうための対策です。SEO施策にはWebサイトの構造上のSEO(これを内部施策と言います)とコンテンツ上の施策(検索されやすいキーワードを見出しに盛り込むなど)があります。
コンテンツ上のSEOマーケティング施策としてよく行われているのが「Google Search Console」などを利用した「検索ワード」調査です。検索ワードからサイトを訪れた人の関心事を探ることで、よりよいコンテンツ制作にもつながります。
◆【MA(マーケティングオートメーション)】
問い合わせのあったリード情報の管理やそれに基づいたメルマガの配信・管理など、特に営業に関するCRM(Custamer Relation Management)を効率化させるツールです。『デジタル時代の基礎知識~BtoBマーケティング』によると、日本では(CRM分野に強い)セールスフォースドットコムのPardotが上場企業のシェア1位です。
②社内で実施する
自社の顧客戦略であるマーケティング活動ですので、社内で実施するというのも選択肢です。MAを除き多額の費用がかかりませんので、どんな人がどんな興味で記事を読んでいるのかを、自分の目で確かめてみるのがよいでしょう。
③外注する
考え方の基本はネット広告と同様です。つまり施策ごとに外注を検討するというものです。また、
ネット広告とWebマーケティングを両方扱える総合マーケティング会社に、コンサルティングを依頼するのも選択肢でしょう。
日進月歩、ドッグイヤーで個別の施策のトレンドについていくのも大変なWebマーケティングの世界だけに、その全体を深いレベルで把握している専門家(プロ)は希少な存在と思われます。Webサイトの情報はもちろん、書籍やマーケティング専門誌をチェックする、展示会に足を運ぶなど、日々、情報収集しながら「頼りになる存在」を探すしかありません。
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(7)サイト運用
社内で制作しても、レンタルクラウドサーバーを利用している場合、サーバー自体の運用にはさほど大きな手間はかかりません。
ただし、Wordpressや追加機能(プラグイン)は定期的にバージョンがアップデートしていますので、その管理や対応が必要となります。また、スパムなどの監視も必要です。
有料のCMSの場合、こうした運用は月額の費用に含まれます。また有料であっても、利用容量が増えてきた場合、利用サービスを適宜アップグレードするなどの検討が必要です。
どこまで外注し、どこまで内製するかは企業にとっては大変、重要な問題です。これはオウンドメディア構築に限った話ではありません。
原則として、会社のコア(強み:コアコンピタンスとも言います)に関わる部分は外注しない・または外注しながらそのノウハウを自社のものにする。逆に「付加価値は高いが、会社のコアと全く関係ない部分」や「(自社の人件費に見合わない)付加価値の低い作業」は、外注するというのが基本方針になると思います。
ここでいう、付加価値の低い作業とは、「誰がやっても結果が同じ(正解がある)」仕事で、将来的に(いまも)「システム化」「自動化」が可能な領域です。
そして、いくら付加価値が高くても自社のコアと関連しなければ、「専門家」にまかせてしまったほうが、短期間で品質の良いアウトプットが得られるということになります。
極端な例ですが、実はよくあるのが、なんでも内製しようという企業です。多様な分野で高い専門性が必要とされている現在では、キャッチアップが難しく品質が上がりづらくなるという危険性があります。社内のリソースも「有限」ですから、その点も注意です。
逆に、手のかかる(特に手を動かすような・時間がかかる)作業はなんでも外注しようという企業もあります(その連鎖が多重下請け構造です)。すると、本来はコアとしようとしていたはず部分のノウハウがたまらず(空洞化してしまう)、いつのまにか市場で勝負ができる自社の「強み」がなくなってしまうという危険性があります。
上記をふまえ、何が会社として勝負したい分野で、他社が簡単には真似できない強みがなにかを見据えたうえで、バランスよく内製と外注を使い分ける必要があります。
【2】構築支援サービスの提供主体は?
こうしてみると、「内製には検討も含めて大変な労力が必要だからすべてお任せしたい!」と考える企業もあるでしょう。そこで、様々な企業が「オウンドメディア構築」に関して支援サービスを実施しています。
ただし、「オウンドメディア」という概念自体の歴史が浅く「クライアント向けの企画・コンテンツ制作」+「読者向けの企画・コンテンツ制作」+「WEB制作/マーケティング」という専門性の異なる要素が必要なため、各々の専門領域の会社がサービスを拡張して提供しているケースが多いです。
そこで、網羅性や属性はマチマチですが、サービス主体となる企業の属性や得意分野からここでは3つに分類してご紹介します。
(1)広告代理店/メディア広告系

特にもしすでにメディア広告出稿経験がある場合に有力となるのが、すでに付き合いのある広告代理店/メディア広告を扱う営業部に頼むというものです。
広告代理店
広告代理店は、ほとんどの場合、企画と発注のプロ集団ですから、前述したあらゆる工程に関わる専門の会社や人をそろえて、顧客の要望をかなえてくれるはずです。
ただし、その分かかる人件費や中間マージンも高く、その他の手段に比べて値段がはるケースがほとんどです。ふだん、億単位のCMを扱っている大手となれば、受注するのは数千万~など、ほかの手段とは一桁以上違う見積もりがでてくる可能性もあります。
また、「World Marketing Summit Japan2015」において、統合マーケティングコミュニケーション(IMC)の提唱者ドン・シュルツ氏が「広告代理店はマス・プロダクションでマス・マーケティングを実施するビジネスモデルを前提に成長した産業である」ことを前置きに「顧客を中心にした会話型のマーケティングに向いていない」と指摘したとあります。(前出の『運用型広告 プロの思考回路』)。
たしかに、読者層にあわせて、単価が1本~数十万のコンテンツディレクションをきめ細やかに行うより、数千万の予算から誰もが知っている「有名人」をブッキングしてキャンペーンを実施するほうが得意という傾向はあるのかもしれません。
メディア広告営業・制作
その点、広告代理店よりも価格の面で敷居が低く、実はノウハウがあるのは、特定読者を抱えた専門雑誌やWebメディア広告営業・制作部です。なぜなら雑誌の広告は、(広告宣伝に見えない)「記事広告」に特徴があるからです。
記事広告は「コンテンツマーケティング」の起源とも言えるものです。つまり、「記事の体裁をとって、自社の良さをさりげなくアピールしてほしい」といったクライアントの要望を、雑誌の広告営業・制作担当は聞きなれているのです。
ただし、常にクライアントと接している広告畑の人の場合、クライアントの要望を聞くのが得意なだけに、オウンドメディアが目指す、読者目線で中立性のある「コンセプト設計・全体企画」は苦手な傾向があります。
同様に、オウンドメディアで公開するのは、サービスの宣伝記事だけではないため、「読者目線」が求められる純粋な記事企画が苦手というケースもあります。
(2)出版社(メディア)出身の編集者系
それに対し「読者目線を追求して企画を立てコンテンツとしてカタチにする」ことを日々の仕事としてきた出版社の編集者は、コンテンツで結果を出そうという際に、頼りになる存在と言えるでしょう。
コンテンツマーケティングの世界には「Like a publisher(出版社のように振るまえ)」という言葉があります。それを実現するためには「出版社(出身)の編集者」に制作を頼んでしまうというのがもっとも近道というわけです。
ただし、紙媒体のみの経験しかない編集者はWebの知見に乏しく、逆にWebメディア(無料コンテンツ制作)のみの経験しかない編集者はコンテンツの質の上げ方に対する知見に乏しいというケースがあるので注意が必要です。
いずれにせよ、そもそも(特に書籍・雑誌を担当していた)出版社の編集者自体の数が少なく、仕事を頼める「出版社出身の編集者」を探してもなかなかいない、というのが実情でしょう。
もし良いフリーの編集者が見つかって、継続的に制作を頼む場合は、コンサルタントフィーの考え方と同様(1本〇〇円でなく)月額の人件費ベースで考えたほうが妥当だと思います。
(3)Web制作・Webマーケティング系

顧客からWeb制作やWebマーケティングの個別施策を受けていた企業が、そのままオウンドメディア構築全般を支援しているケースがあります。
Web制作会社系
利点としては、Webサイトの細かなカスタマイズに対応してくれるほか、構築のみであれば、安価になるケースが多いと言えます。ただし、デメリットはコンテンツの発注代行はしてくれたとしても、企画面や品質に対する知見が乏しい傾向があるということです。
Webマーケティング系
利点としては、最新のWebマーケティングに詳しいことが多く、データ分析の面から頼りになるということです。ただし、コンテンツに関してはWeb制作会社と同様です。
なお、出版業界、特に書籍では外注される制作会社がセットで企画もするということが行われてきました。いわゆる編プロ(編集プロダクション)です。ただし、編プロは(出版社に企画を持ち込みたい)著者との共同作業となることが前提です。また、プロダクションが企画も制作もするのはコンテンツ業界ならではとも言えます。
そのため、Web業界の会社にとっては、オウンドメディアのコンテンツの企画も制作も実施する、という考え方はなじまないかもしれません。
(4)費用相場は?
前述のように「オウンドメディア」という概念自体の誕生が日が浅く「クライアント向けの制作」+「企画・コンテンツ制作」+「WEB制作/マーケティング」という専門性の異なる要素が必要なためまだ、「オウンドメディア構築サービス」というフルサポートサービスを打ち出しているところは少ないようです。
加えて、サービスがあったとしても要・見積もり(サイトには価格・非掲載)のところが多いようです。そのなかで、サイトで価格の目安を出していた下記をご紹介します。
・株式会社LIG(2021年12月時点)
メディアサイト制作として2つのプランが提示してあります。
★ベーシック(3ページ前後+記事):200~500万円
★プレミアム(10ページj前後+記事):500~800万円
・SOMEWRITE(2021年12月時点)
オウンドメディア構築フルサポートにて、設計が50万円~、構築は100万~、オウンドメディア運用は50万円/月~、それとは別に記者経験者プロサービスというものがあり、定期サポートは、50万円/月~となっています。
★本内容はPDFでもご覧いただけます。コチラのサイトよりダウンロードください(無料)。
【3】3つの良さを「いいとこ取り」する
さて、最後に宣伝です。こうした実情に対し「帯に短し、たすきに長し…」と感じる方に向けて、事業革新は創業メンバーの強みを活かした、オウンドメディア構築サービスをご提供しています。
ポイントは3つの良さを「いいとこ取り」しているという点です。編集者ならではの「全体コンセプト設計」や「企画」にはいりつつ「広告系」ならではのクライアントの要望をくみ取った「個別記事」を企画・制作します。また、Webサイトも併せて構築し、拡散やWebマーケティングに関するアドバイス・サポートを行います。
こうしたサービスを提供できる理由は、立ち上げメンバーのバックグラウンドにあります。まず、出版社メディア出身者としては筆者(小林)が入っています。同様に広告系の強みの部分はクライアント向け制作36年のキャリアを持つ工藤(当社シニアエディター)が、そしてWeb制作・マーケティング会社も運営する大高(当社代表/運用統括)がはいることで、全体としてバランスの良いサービスを提供できるようになっています。
当社のメンバー紹介はコチラのページからご覧ください。
サービス立ち上げ時ですので、その品質維持体制を確立すべく、事業革新の創業メンバーがしっかりと入ってオウンドメディアを構築いたします。
また、記事の内容にあわせて、当社運営メディア「事業革新」や提携メディア「育Work」と無料で提携できるというのもポイントです。
そしてご提供内容を「オウンドメディア構築に最低限必要なもの」をパッケージ化して「明朗価格」としています。
具体的には初期費用として「全体コンセプト設計」+「サイト構築」+「初回コンテンツ企画・制作(6本)」込みで250万円(税別)となっています。
月額費用は、サイト運営費と年間6本のブランディング記事企画・制作、プロ編集者・記者による内製記事制作サポートを含み33万円(税別)です。
これは、2021年12月時点の価格で、立ち上げ時にご利用いただいたお客様に対する「感謝価格」となっています(各社の相場をここで詳細にご紹介しているのは、全体のコストパフォーマンスの面で自信があるからです)。
ぜひ詳細は、以下のサービス紹介ページにてご覧いただき、ご検討いただければ幸いです。
★本内容はPDFでもご覧いただけます。コチラのサイトよりダウンロードください(無料)。
―記事注―
本記事の相場や見解に関しては、前述のように下記参考文献と筆者の取材・調査および18年のビジネスメディアキャリアの経験に基づき執筆したものです。既述のものも含め、参考書籍としてご紹介します。
<参考文献>
書名 | 版元 | 刊行 |
経営者のためのウェブブランディングの教科書 |
幻冬舎 | 2015年 2月 |
小さな会社を強くするブランドづくりの教科書 |
日本経済社出版 | 2013年 9月 |
デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』 「潜在」リードから効率的に売上をつくる新しいルール |
翔泳社 | 2020年 5月 |
事例で学ぶBtoBマーケティングの戦略と実践 |
すばる舎 | 2020年11月 |
「自社だけの市場」が必ずみつかる 中小製造業のための儲かるWebブランディングの教科書 |
日本実業出版社 | 2016年10月 |
いちばんやさしいデジタルマーケティングの教科書 |
インプレス | 2017年 9月 |
Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書 |
エムディエヌコーポレーション | 2015年12月 |
月刊『広報会議』12月号 BtoB特集 |
宣伝会議 | 2021年11月 |
BtoB企業のためのマーケティングコンテンツ制作ガイド |
金風舎 | 2019年 8月 |
ゼロからはじめるネット広告代理店ガイド |
秀和システム | 2020年 9月 |
ビジネスを加速させる Facebook広告&Instagram広告制作・運用の教科書 |
つた書房 | 2020年10月 |
運用型広告 プロの思考回路~AdWords/Yahoo!/Facebook広告の効果を最大化するベストプラクティス |
KADOKAWA | 2016年3月 |
広告業界の動向とからくりがよくわかる本[第5版] |
秀和システム | 2021年 3月 |
ネット広告の基本と仕組みがすべてわかる本 |
秀和システム | 2021年 3月 |
ビジネスを加速させる ランディングページ最強の3パターン制作・運用教科書 |
つた書房 | 2020年 9月 |
新版 広報・PRの基本 |
日本実業出版社 | 2020年 1月 |
最新SEO完全対策・成功の指南書 |
インプレス | 2018年12月 |
効果がすぐ出るSEO辞典 |
翔泳社 | 2016年 1月 |
オウンドメディアのやさしい教科書~ブランド力・業績を向上させるための戦略・制作・改善メソッド |
エムディエヌコーポレーション | 2018年 4月 |
オウンドメディアのつくりかた |
ビー・エヌ・エヌ新社 | 2017年 7月 |